前半からの続き。
このブログはサンリオ関係のことを書くことにしているが、本ブログエントリーの後半はサンリオに全然関係ない。キティの卒論は前半にある。
その他扱いでごめんなさい。自分の興味の関係でキティがメインだったので。その他に分類してはいるが、いずれもテーマの選び方が良かったり分析方法に工夫があったりして素晴らしい発表だった。本ブログエントリーの概要でも書いたが、8番の光モノ、2番の女の子写真、5番の百合が特によかった。
アニメ『おジャ魔女どれみ』は子供向けアニメでありながら、子育てや家族問題などの社会問題を取り上げている。そのような内容であるのに魔法は必要だったのだろうか。本論文の調査範囲はアニメ4年分でOVAは除いている。
魔女界は人間界と別のものとなっており、既存の概念とははなれていない。魔女は黒ローブであれどカラフルな髪であったり職業があったりで子供が恐怖を感じないようにしている。本作における魔法の概念として以下のものが挙げられる。
- 魔法を使うためにはエネルギー源が必要で有限である。
- 実技試験による魔女見習い試験。
- 禁断の魔法。倫理に反することを禁断の魔法とすることで、子供の教育とする。
- おんぷは魔法が便利であるから使い続けたおんぷはその見返りを受けて成長していった。
- ハナちゃんは魔法が便利なので魔法を乱発していたが、どれみ達が魔法の使い方を教え、ハナちゃんの成長につながった。
魔女と人間の恋が成就しないことは1980年代から使われていた設定であり、本作もそうであるが、人間との悲しい過去を描いた壮大なものになっている。魔法を使わない魔女も登場する。
魔法バンクは基本動作は大きく変わらず作画を使いまわしている。キャラクターごとに背景色がイメージカラーになっていたり性格に基づいた動作となっている。シナリオ上重要な場面では通常とは別の作画となっている。
- Q: けがを治すことが禁断の魔法扱いになっている。けがや病気を治すのは倫理的に間違っているのか。
- A: 簡単にできないことを魔法でやるのがいけない。
- Q: スライド中に出てきたカラフルな魔女はどのような役割か。2種類だけなのか。
- A: 魔女見習いの試験官で算数の試験をした魔女。中間的なものもあるので3種類に分けられなくもないが、2種類にまとめた。
- Q: 男の魔法使いはいるか。
- A: 魔法使いは魔法使い界に住んでいる。あるいきさつのため、魔法使い界と魔女界が分かれている。
- Q: 魔法を使わない魔女がいたとのことだが、逆に魔法を乱発するキャラクターはいたか。
- A: 魔法に対する悲観的な描写は少ない。ただ楽をしようとして、その結果学習するというのがおんぷやハナちゃんである。
- Q: 恋愛要素はあるか。
- A: どれみには恋愛要素のあるエピソードが多かったがどれも成就しなかった。葉月とクラスメイトには青春っぽいシーンが多かった。
- Q: 登場人物たちは魔女学校には通わないのか。
- A: 基本的に普通の小学校に通っている。満月の時のみ魔女界に行けるのでその時に行く。
- Q: 通信教育なのか。
- A: 通信教育ではない。特にカリキュラムがあるわけでもなく、日常の中で魔法を使って上達していく。
- Q: 魔法で解決しなかった例はなにがあるか。
- A: 魔法が必須とはなっていないストーリー構成が多い。たとえ魔法を使ってもその効果が直接的な助けにはなっていないことが多い。不登校の女の子について三部作で放送された回があり、魔法を使うのではなく地道に主人公たちがサポートしていた。魔法が使われる場面としては、その子の様子をうかがうためにハムスターに変身したりであって、直接的に不登校を救うものではない。
- Q: まとめに書かれていることは他の魔法少女アニメに比べて顕著な特徴といえるか。
- A: 人間が大切にできることであったり日常性により親近感を持たせたのは、他にはなかった。
おジャ魔女どれみを見ていないので何の事だかわからん。魔法少女アニメと言ったらミンキーモモやクリィミーマミが思い浮かぶようではだめなんだろう。質疑 1g のような質問にも即答えられているくらいなので発表者はよっぽど調べて頭に入っているんだろうなあ。発行される卒論を読んで勉強しよう。
- 豊島綾乃さん
- 【第4回】女の子写真
- 【第15回】女の子写真②
「女の子写真」の定義は、女の子が撮った写真である。女の子が写った写真ではない。1990年から女性写真家が多く出てきたが、従来の写真の路線と異なっており技術も稚拙だったため、「女の子写真」には揶揄的な響きが含まれていた。
カメラの歴史として戦前戦後は値段も高く一般に買えるものでもなく扱いも難しかった。1977年にオートフォーカスカメラが登場し、1989年にビックミニで小型で完全自動となり誰もが使えるようになった。
時代ごとの写真の撮り方を見てみると、戦前・戦後ではリアリズムで報道写真。1960年に様々なアングルを試みたり地域性を撮ったものがあった。1970年ではアレ・ブレ・ボケなどのタブーに挑んだり私写真があった。
1990年代から出てきた女の子写真の特徴としてあげられるものは、セルフポートレート、家族写真、身近なもの、一部分の切り取り、稚拙な撮影技術。稚拙な例としてはフィルム感光、不適切な露出、手ブレ・フォーカス外れなどがある。
展示の仕方がバラエティに富む。コミュニケーションのある写真で作者、被写体、見る人との距離を縮めるものである。
女の子写真のような表現はその後男性からも出されるようになり、男性性・女性性の両方を兼ね備えた写真も出てきた。
ADC年鑑で広告写真における女の子写真を使った企業数を調べてみた。
1995年のHIROMIXや1996年の蜷川実花のころから急増している。とくに女性向け商品広告に女の子写真が多い。B to B 向け広告でも親近感を出すために使われだすようにもなった。
まとめとして、女の子写真は女性ならではの感性による表現で、それ以降は特筆して新しい写真表現は生まれていない。よって女の子写真は揶揄されるものではなく、新しい表現手法と言える。
- Q: 女の子写真に対する具体的な批判はあったのか。
- A: 篠山紀信が強く批判していた。セルフヌードに特に食いついていた。
- Q: 日常を切り取った写真は今ではそのような写真はよく目にする。昔からもあったのではないか。
- A: ありはしただろうが、1990年代のHIROMIX以降に急激に増えた。
- Q: 女の子写真以前では、ぶれた写真や逆光などの失敗写真は世間から評価されなかったのか。
- A: 女の子写真の時代以降は評価されるようになった。失敗していても日常性のために親しみやすい。
- Q: 写真新世紀・写真ひとつぼ展の特徴はなにか。
- A: 今までの写真展はベテランが出すもの。写真新世紀・写真ひとつぼ展は新人を探すためのものであり、写真新世紀で賞を取ると1年間個展が開ける。
- Q: インスタレーションとは何か。
- A: 空間芸術のこと。写真展で写真をただ壁に貼るのではなく、床にちりばめたりするなどして、単純に写真だけではない芸術表現のことを言っている。
- Q: グラフでは1995年よりも前にも女の子写真があったようだがその特徴はなにか。
- A: 写真ではなくグラフィックや文字が多かったがのちの女の子写真のような特徴がみられた。
- Q: 男性性の特徴とはなにか。
- A: 外から客観的に見ているのが男性的。
- Q: 今はカメラのセンサーサイズが大きくなりボケが大きくなったりしている。機能による変化が女の子写真に影響しているのでは。
- A: あると思われる。蜷川実花風のカメラアプリやトイカメラなどの影響もある。
- Q: グラフは発表者が独自に作ったものだと思われるが、母数との関係がわかるようにしてほしい。
- A: 修正する。年間でおよそ50から60の広告作品があり、同じ企業のものは一つにまとめている。ただ企業が同じでも資生堂のようにブランドがたくさんある場合には別でカウントしているものもある。
- Q: ADC年鑑はすべての広告を載せているわけではない。どのような基準で載っているのか。
- A: 調査では様々な年鑑を調べてみたがADC年鑑が広告が多く最適であった。ADC年鑑に載る基準はADCの中の人が選んだものが載っている。
- Q: ラテアートなどの写真を撮るようになったのは女の子写真に起源があるのだろう。数ある中からのHIROMIXが生まれたのか、それともHIROMIXの影響で多数の女の子写真が出てきたのか。
- A: HIROMIXが先だと考えている。携帯にカメラが搭載されたのは1998年だからだ。
- Q: 卵と鶏なので難しい。女の子写真ではビックミニのように日常の記録に使うものを芸術作品にしていったのが斬新だった。
多数の写真を目視で分類するという地道な作業の結果によって結論を出せているのが良い。計算工学出身の自分は女の子写真を判定するプログラムを作り、精度がどうだったとか持っていき、文化的側面を見落としてしまいそう。
フォーカスがあっていなかったり不適切な露出などのいわゆる失敗写真はつい避けてしまうのだが、それらの手法も取り入れられるようにならんとなあと自戒。
- 中西茜さん
- 【第8回】ゲーム実況
- 【第19回】ゲーム実況②
スライド表紙の写真を撮り忘れました。ごめんなさい。
ゲーム実況とは、しゃべりながらゲームをプレイし、それをネットで配信すること。実況プレイ動画はそれを録画・録音したもの。ただしここでのゲームとは、家庭用ゲーム機などのゲームのことである。ゲーム実況は2000年から流行りだし2010年には広まりすぎた。広まりすぎたために今ではつまらないものだという人もいる。はたしてゲーム実況は終わったコンテンツなのか。立てた仮説は、実況プレイ動画の変化、ゲーム実況の公式化、実況者のアイドル化である。
ニコニコ動画で流行りだした文化なのでニコニコ動画を調査対象とする。ニコニコ動画は2006年12月にサービスを開始し、コメント機能により疑似同期的なコミュニケーションができる。
ゲーム実況の歴史として、2003年に PeerCast が流行し、2003年11月にゲームセンターCXの放送が開始した。2006年に YouTube に投稿されるようになり、2007年3月からニコニコ動画での実況者が出始める。2007年10月から初プレイでノーカットのスタイルができだした。
実況プレイの変化を調べた。全体的な傾向として、有償のゲームばかりだったのが、無償のが出てくるようになった。デイリーランキング1位を取った動画の変化としては、2008年以降からはゲームの遊び方に工夫がみられるようになった。たとえばマリオでキノコをよけたりするなど。2010年からは縛りプレイをするようになった。2011年からはコラボ実況もなされるようになり後々のアイドル化につながる。編集が入るようになったのは2009年ごろからで、ラジオ的なものからテレビ的なものになった。
著名な実況者曰く、2009年から動画につけられるコメントがつまらなくなったといっている。2008年にニコニコ動画のユーザ数が急に増えたせいなのではなかろうか。
ゲーム実況の公式化もなされた。そもそもゲーム実況は著作権的に黒であるが、大きなメーカーは割と黙認していた。ゲーム実況者のプロ化もあり、プロの人たちは公式に許諾を得て活動するようになった。
公式化に伴い実況者がアイドル化されるようになった。実況者と pixiv の投稿を比べると2005年が最初であった。もともとは男性文化だったが女性ファンも増えるようになった。ゲームよりも実況者のためにゲーム実況を見る層も増えた。
結論としては、2008年以前から活動していた一部の実況者や視聴者にとってはゲーム実況はオワコンである。
- Q: pixiv での実況者のキャラクターの探し方はどのようにしたか。
- A: 実況者、実況プレイヤーなどのタグで検索した。
- Q: コメントの内容で批判的なものにはどういったものがあるか。
- A: 女性プレイヤーに対する非難が多い。
- Q: ユーザが増えると面白くなくなる理由は何か。
- A: 内輪で楽しんでいたのに、ユーザが増えることで子供や年下が入ってきてコメントの質が下がった。またゲーム以外のコメントが増えた。浅いファンが増えたということ。
- Q: キャラクターイラストの活用。
- A: キャラクターイラストのグッズを販売したりしている。
- Q: 解説実況が増えていったことの理由は何が考えられるか。
- A: 時期としては2009年ぐらいから始まっていった。
- Q: オワコンの理由は再生数ではなく中身が廃れたという意味なのか。
- A: その通り。昔の人から見たらつまらないという意味だ。
- Q: 再生数自体は減っていないのか。
- A: 逆に増えているため、ジャンルとしては依然として成長傾向にある。
新しいジャンルなので先行研究が少なく自前で調査しなければならなくて大変だっただろう。卒論文集で早く統計データを見たい。
人が増えてつまらなくなったというのは他のジャンルでも言われる。どうすればいいんだろうね。
- 堀込一菜さん
- 【第9回】商業施設
- 【第20回】商業施設②
先行研究にショッピングモーライゼーションという言葉がある。都市の公共機関の民間サービス化により、公共機関のショッピングモール化していること。東京駅やスカイツリーや羽田空港は本来の施設の役割だけでなく、様々な商業施設が入っている。
本論文の目的は、東京の商業施設を分析し、都市で商業施設が果たす役割を追求する。そしてそれらの商業施設が街の個性形成における重要な要素となっていることを明らかにする。
ショッピングセンターが増えていった理由は、百貨店の衰退および不動産業者による開発増加によるものである。
昨今の商業施設に求められているものは以下のものがある。
- テーマ性。KIRARITO GINZA は結婚をテーマにした。マーチエキュート神田万世橋は開発や環境のコンセプトとしている。最近出展されるショッピングモールはテーマが具体的なものになってきている。
- 初出店・新業態。2002年の丸ビルでは日本初出店は140店舗中2店舗だったのが新丸ビルでは153店の3分の1が初出店や新業態であったりする。渋谷ヒカリエでも初出店・新業態を前面に出している。
- 限定物。
- 専門性。代官山 T-SITE では TSUTAYA が運営しているが、DVDとして存在しない映画や作品をDVD化してくれるサービスをしていたりする。
- 新地開拓。
- 街との結びつき。原宿の東急プラザでは明治神宮と表参道の間にあるが屋上にも木を植えて緑が途切れないようにしている。そのようにして景観を壊さないようにしている。
1-5番で他との差別化をし、6番で地域とのつながりを持つようにしている。
まとめ。商業施設は差別化をしつつ地域と一体化することで、その町ならではの個性を形成していっている。
- Q: イオンやイオンモールはショッピングモールに含んでいるのか。
- A: 含んでいる
- Q: 地方のイオンモールは没個性的に見える
- A: 没固定的な一面があるのも事実である
- Q: 街の個性を守っている例が弱かった。
- A: 地域の特産物を売る機会を作るなどの企画がある。マーチエキュートでは展示できる場所がある。
なんかテーマが真面目だ。初出店・新業態の割合変化が印象的だった。ショッピングセンターなどをこのような視点で見てみると面白そうである。
- 後藤壮史さん
- 【第6回】百合と男性
- 【第17回】百合と男性②
百合を女性同士の精神的な結びつきを描写する漫画、アニメ、小説などの創作物と定義する。主体同士に同性愛としての恋愛感情が発生する必要はない。
読者層は『コミック百合姫』は2.7:7.3で女性が多い。『コミック百合姫S』は6.2:3.8で男性が多い。数字は読者からのアンケートによるもの。百合はもともと女性向けのものであったが男性読者も多くなってきている。
男が読む理由として、ササキバラ・ゴウは、「かわいい」の登場以後「フェミニスト的偽装」をする男性が出現した、と主張している。一方で熊田一雄は、百合に登場する人物と「同一化・同一視」ているのであり「フェミニスト的偽装」ではない、と主張している。
仮定は、現状は同一化する読み方が増えており、同一化以外の読み方も存在する、である。
戦前期では女子校を舞台にしたものが多かった。昭和期は全体的な数が少なく、内容としてはポルノ的な要素が強かった。平成期からは「明るいレズビアン」となり隆盛した。1992年の『美少女戦士セーラームーン』が大ヒットし、特に二次創作においてかつてない盛り上がりを見せた。1997年の『少女革命ウテナ』もヒットしたが二次創作はセーラームーンほどではなかった。ウテナでは登場人物の関係が完成されていたため創作の余地がなかったためである。1999年の『マリア様がみてる』はメディアミックスが盛んであった。
言葉としての百合の変遷をまとめる。1971年に男性同士の雑誌『薔薇属』のなかに女性同士の『百合族の部屋』コーナーが登場した。1983年に『セーラー服百合族』のポルノ作品が出て、百合族と百合の言葉が分離した。百合族は肉体的なものを含み、百合は含まない。言葉としての百合族はレズビアンやレズにとってかわり言葉としては死んだ。1989年に創作ジャンルとしての百合はコミックマーケット39カタログに登場した。プラトニック百合という名称だったのは肉体的関係要素がないことを明確化するためであった。「×」マークによるカップリング表記を用いることが多く、百合という言葉は二次創作で明示して使い事はあまりない。
男性作家による百合著作を分析する。専門誌に載った連載4作品を分析した。男性の登場や異性愛の描写や「萌え」の強調には有無にばらつきがあるが、関係性の掘り下げはすべての作品で行われていた。
男性読者の実例を調査した。5910名の mixi コミュニティの書き込みの中で男性によるものと思われるものを分析した。同一化は少数。性的要素が少なく萌えとしての百合が多い。
- Q: セーラームーンの二次創作が伸びてウテナが伸びなかったのは原作で関係で完成しているとのことだが、それは他の作品でもあてはまる全体的な傾向なのか。
- A: 全体的な傾向である。マリアや東方プロジェクトでは関係が完成していないので補完する余裕があるために伸びた。
- 男性読者が同一化ではなく第三者視点と分類できた理由はなにか。
- キャラ萌えなどが多く、第三者視点とした。
- 本当にコミックマーケット39でのプラトニック百合が初出なのか。
- 先行研究では40が最初だとなっていたが自分で調査したら39が最初で一つのサークルで使われていた。40では二つ以上のサークルで百合という単語が使われていた。
ぜんぜんゆるくなくてガチだった。ゼミに所属しての最初のブログエントリーが私の持ってる百合(に対する私見・作品)なくらいなので本物だ。
卒論発表を見に行く理由ではキティよりも百合のほうが大きかった @wahho さんはがいうには、分析の難しい3章の男性読者に期待しているとのこと。修士課程で3章を継続してほしいとも言っていた。
- 中尾琴美さん
- 【第10回】少年合唱団
- 【第21回】少年合唱団②
ウィーン少年合唱団は皆さんご存知のはず。LIBERA はロンドンの合唱団で、クラシックとPOPの融合をしたスタイルを確立している。
仮説は、日本に海外の少年合唱団が紹介されるのは、映画やドラマなどの映像メディアでまず入ってきて、ほかのメディアがそれに続く、とした。LIBERA は自らを少年合唱団と名乗っていないが、日本では少年合唱団と紹介されている。本論文では LIBERA も少年合唱団に含める。
ウィーン少年合唱団を選んだのは1955年に初来日して継続的に日本にも来ており日本での知名度が高い。LIBERA は2005年が初来日。ウィーン少年合唱団は1935年に映画で歌を使われ、LIBERA は2001年にドラマやゲームで歌が使われていた。そのため初来日時には日本人はどちらもの歌を事前に聞いていた。
ウィーン少年合唱団は1964年に『週刊少女マイフレンド』で何度も取り上げられていた。LIBERA は2005年のアルバムCD『フリー』がクラシックランキングで1位であった。2006年のテレビドラマ『氷壁』主題歌に使われCDもよく売れた。これらの要因で少年合唱団が話題を集めた。
それらの話題を集めた時に、日本のメディアにはどのような内容が載ったのか。ウィーン少年合唱団は物語的なものから最新情報を載せるようになり、文通の方法なども載せていた。LIBERA はファッション誌的、音楽誌的な内容。共通する点は、女性誌が多く、写真が必ず入っておりオフショットが多い。姿が見えないクラシック系とは異なる点である。
- Q: 統計のために『週刊少女マイフレンド』を使った理由はなにか。
- A: 先行研究によるとウィーン少年合唱団の当初に注目した雑誌は4つしかなく、その中でよく掲載していた『週刊少女マイフレンド』を使った。
- Q: 当時『なかよし』でよく見かけたが漫画雑誌を除いているのか。
- A: 除いたつもりはない。雑誌データベースで引っかからなかった。
- Q: 一般雑誌以外のも含むデータベースを調べてほしい。
- Q: ウィーン少年合唱団の歌はクラシック曲なのか映画のための曲なのか。彼らからすれば映画は本業ではないはずで、いつごろから本業から変わっていったのか。
- A: いつだったかは覚えていないが転換期があった。コンサートに行く人の投票で歌ってほしい歌を選んでいる。そのため今時の歌を歌うこともある。
- Q: 映画の主題歌などで使われているのは日本に限った話なのか。オーストリアではどうなのか。
- A: LIBERA は映画『ハンニバル』で使われたりしているので外国でもある。ウィーン少年合唱団は日本に限って調べたので外国のことは分からない。
- Q: LIBERA が少年合唱団と名乗っていないのはなぜか。
- A: 現代的なサウンドを使っているので少年合唱団と呼んでほしくないとのこと。ただしCDでは典型的な宗教音楽もあり、ローマ法王の前で歌ったこともあるので本流を外しているわけではない。ただし、日本に限らずイギリスでも少年合唱団は古臭いというイメージがあり、その呼び名を使わないようにしてくれと言っている。
- Q: メディアに注目されるということは、その時に需要があるはずだ。その需要が発生する理由に共通点はあるか。
- A: ウィーン少年合唱団と LIBERA ではその当時当時でファンが違うため一概には言えない。『週刊少女マイフレンド』は子供に人気があり、ウィーン少年合唱団が歌っていた映画もディズニー映画だった。一方で LIBERA は、ドラマが代理母出産などの重い内容で視聴者の年齢層が高めである。そのため、それぞれ一番初めにつくファンの層が違う。
- Q: ウィーン少年合唱団はだいぶ前から活動していたようだが、日本で紹介されるようになった時期が離れているのはなぜか。
- A: 以前にも映画がいっぱいあった。『青きドナウ』は合唱団の等身大の様子を描いておりそれ以前の映画とは異なる要素がある。それを見た同年代の少年少女が興味を持ったのではないか。
LIBERA という単語を初めて聞きました。そんな私には何も語る資格はない。
6a の質問をした人は発表者が生まれるよりも前の時代における実体験をもとに質問をしている。文献を調べて生まれる前の時代のことを調べる文化学の魅力なのだろうなと思った。
- 石田菜名子さん
- 【第2回】光モノ。
- 【第12回】光モノ。 その②
ライブでの光モノが好きで、その起源を知りたかった。初期調査の資料の中では西條秀樹が最も古いようである。ライブ映像を見ると1970年や1980年ではまだ客席に光モノがなく暗い。2000年にはもう完全に普及しているようだ。
立てた仮説は、1974年の西條秀樹の大阪球場ライブが最初だったのか、普及したきっかけがなんであるか、である。本発表では使い捨てのをサイリュームと呼び、再利用可能な電池式をペンライトと呼ぶ。それらをあわせて光モノと呼ぶ。
サイリュームはアポロ計画で開発が始まり1971年に完成した。一般の目に触れるようになったのは1976年のモントリオールオリンピック閉会式で選手団がイベント演出で使用した時だ。日本での発売は1977年の日経産業新聞に載っていたのが最初だが、値段が高すぎて売れなかった。1978年に現在のルミカが発光体の開発に着手し、1979年に釣り用発光体ケミホタルがヒットした。
ライブで使われだしたのがいつなのかを調べるために、芸能雑誌を調査した。西條秀樹が最初で当時は手持ちランプと呼ばれていた。
1985年以降だと色んなライブで使われるようになった。
ジャニーズを色分けするとジャニーズが多いことが分かる。ジャニーズはもともと雑誌に取り上げられることが多いこともあるのでバイアスがかかっているだろうが、ジャニーズが普及のきっかけと考えられる。ジャニーズの公式グッズに光モノもあった。
製造業者と販売業者へのインタビューも行った。製造業者のルミカによると、1983年にはライブでの需要は意識するようになった。ルミカから売り込んだのではなくアーティストから依頼があった。2007年か2008年の大閃光からより広まるようになり、その原因はテレビの影響で光モノが認知されるようになったことと、モノからコトへの楽しみ方の変化が起きたこと。また100円ショップでの販売開始で売り上げが1-2ケタ伸びた。
サイリュームとペンライトは広まり方に違いがあり、サイリュームは自然発生的に広がり、ペンライトは運営側の種まき活動により普及していった。
まとめ。ライブでの使用は西條秀樹が最初である。普及のきっかけは2000年以前と予測していたが、2000年以降が正しかったので2000年以降を調査する必要がある。
- Q: なぜ西條秀樹が懐中電灯を持ってこいといったのか。
- A: 暗い客席にいるお客さんをステージから見えるようにするため。
- Q: 海外ではなぜ流行ったのか。
- A: 日本に絞ったため未調査。マイケルジャクソンとかでもやっているので、何らかのきっかけがあって流行ったはず。
- Q: 声優のライブによく行く。声優のライブではサイリュームはもう使われておらずペンライトに変わっている。他のライブでの予測があったら教えてほしい。
- A: LEDの進歩で充分な明るさがいるのにサイリュームが残っているのが不思議である。サイリュームを愛するファンにはこだわりがあるらしい。LEDなら再利用が可能で色も変えられたりもするので、いつかはLEDに一本化すると予測している。
- Q: ジャニーズでは公式で光モノを売っている。他のアーティストでは自分で持ち込むのが主流なのか会場で買うのが主流なのか。
- A: まちまちである。Avex では公式のみと縛っていることもある。
- Q: 光モノによってコンサートの在り方がどう変わったか。
- A: 歌を聴くだけでなくコンサートの一部となる満足感を味わえるようになった。
- Q: 自主的に使うのと、演出として指示されての使用での違いで、体験はどう変わるか。
- A: オタクと非オタクで異なるのではなかろうか。演出用では無線式のもある。
10本あった発表の中でこの発表を個人的にはベスト発表に選びたい。ライブではパフォーマーに比べて光モノは脇役であるが、そこに着目した点が面白い。章立ても分かりやすく、発表がすごく理解しやすかった。他の発表では文献を調べるだけのことが多かったが、本発表では製造業者や販売業者へのインタビューを実施して既存の文献には載っていないであろう事実を文章として固定させた。光モノについて調べる過程で電池の歴史までも調べていったとのことなので、光モノに関連する別の事象についてもまとまっているのかと思うと、冊子の卒論文集が楽しみだ。
- 原田藍子さん
- 【第11回】サブカル女子
- 【第22回】サブカル女子②
自身はサブカル女子である。サブカル女子がなぜ叩かれるのか疑問であった。特にネットで叩かれる。その理由を解明したい。
サブカル女子のイメージ。
実在のサブカル女子を探すために、ヴィレッジヴァンガードや下北沢などのサブカル女子特有のキーワードでアメブロのプロフィールを検索した。その例がこのアメブロプロフィールのリンク一覧である。
- 発表者: アメブロのプロフィールをここで出していいだろうか。
- 指導教員: 全世界にさらしているのだから構わない。
- 発表者: では公開処刑で。
叩く側からはサブカル女子が、自分大好き、自分に酔っている、上から目線、ミーハー、ロキノン厨とかぶっている、と思われている。
サブカル女子の自意識としてはサブカル女子に対してポジティブな意識を持って憧れている人もいる。叩かれているのに、その叩かれている内容を自覚していないこともある。たとえば個性を重視していると主張しているのに、実際には画一的なファッションで無個性となっている。
そもそもなぜ叩くのか。女性が叩いているとしたら、自分自身も同類だから叩くのか。男性のオタクがサブカル女子を叩くのか。仮想敵のためや自己定義のためか。個性と無個性の矛盾を叩いている。
- Q: 叩かれる理由はなにか。
- A: 趣味に対する姿勢、場の空気を読まないこと、媚を売っているのにもかかわらず人に無関心である矛盾。
- Q: 文化系女子とサブカル女子は近いとのことだが、具体的にどう違い、どう似ているのか。
- A: 文化系女子はサブカル女子よりも前からある言葉である。文化系女子は何を好んでいるかが大きい。サブカル女子は好んでいるものをどう使って自らをアピールするかが大きい。
- Q: 叩かれかたと実態は一致しているのか。
- A: 一致している。叩く側は容姿や言動を見てそれを具体的に書いたうえで叩いている。
- Q: 叩く側は、本当に見たのか、イメージで叩いているだけなのか。
- A: 実在するサブカル女子は少ないので、イメージで叩いていることもあるだろう。
- Q: 叩かれる側の属性を分析しているが、叩く側の属性は調べているか。
- A: 調べていない。叩く側の属性に傾向があるのかもしれないが、それを証明する方法が見つかっていない。
- Q: 掲示板でどのような文脈で叩かれているのかを調べるとよい。
申し訳ないがさっぱり理解できなかった。「公開処刑」の言葉を発する前後が最大の盛り上がりだった。
- 渡島隆弘さん
- 【第3回】漫画とホームレス
- 【第14回】漫画とホームレス②
本発表では「ホームレス」と呼ばずに「ホームレス者」という言葉を用いる。ホームレスは状態を表す語であり、人を指すためにホームレス者と呼ぶ。
漫画の描かれるホームレス者のイメージはパターン化された特徴から作られているのか、イメージのパターンは継承されているのか、を仮説とする。
前提知識のために乞食、浮浪者、ホームレス者を定義する。下図。本論文ではホームレス者を、習慣的・規則的な住居を持たない人と定義する。厚生労働省の統計に出てくるホームレス者は図での小さい円のホームレス者のことを指しており、本論文ではより広い意味でホームレス者と呼んでいる。政府発表ではネットカフェ難民のような新たな形態が漏れているので、統計と実態のかい離に注意が必要である。
漫画に描かれているホームレス者の特徴を調べてみた。44作品の単行本を読んで約200人のホームレス者の特徴を調べた。44作品の内容は下図。2001年以降の単行本が多いが、それは2001年以降にホームレス者が登場する漫画の割合が増えたのではなく、調査対象の偏りによるものなので、年代のグラフは参考にしなくてよい。詳しくはレジュメの一覧を参照。
結論としては、ホームレス者には外見的特徴があるとは言えない。目や鼻や歯や服装ではパターン化していない。髭は無精髭でパターン化してはいるが、パターン化しているのはそれくらいだ。髭以外はほとんどが時代に沿ったものとなっている。
一方で性別、登場場所、集団性には傾向がみられた。性別では男性が9割。登場場所では公園か河原か路上がほとんど。集団性では8割が集団で表れている。これらのほうが外見的特徴よりも重要で、この3要素を兼ね備えていることがホームレス者の特徴となっている。外見的特徴は受け継がれているがパターン化まではされておらず、これらの3要素のほうが重要である。またネットカフェ難民などの新しい層はまだ漫画に描かれておらず、今後これらの傾向も見ておく必要がある。
- Q: 実態と漫画に描かれるものは異なる可能性があるのではないか。
- A: その可能性もある。例えば『荒川アンダーザブリッジ』はホームレス者らしくないホームレス者が出てくるため、判断に苦労した。
- Q: パターン化と継承の違いは何か。
- A: パターンはある時点において、継承は昔からあるものなのか。なので継承はされているがパターン化されていない。
- Q: 調査対象の漫画を選んだ基準は何か。
- A: 単行本はネットで検索して引っかかったもの。そのために最近のものが多い。
- Q: 検索の方法は何か。Amazon などでの口コミか書籍データベースか。
- A: Google 検索で、ホームレスなどのキーワードを使って調べた。
- Q: 継承とパターンの基準は何か。
- A: 30%とした。30%以上継承されていれば継承かつパターン。30%以下なら継承のみである。
- Q: 登場の仕方のパターンについて。集団で出てきた場合には登場の仕方に傾向があるのでは。
- A: 出てきた後は物語の進み方が速くなる。出てくる前は主人公が危機に瀕したときに助けに急に出てくるなど。そのような傾向がある。
- Q: ホームレス者は助ける側か悪い側か。
- A: 悪い側であることが多い。
- Q: ホームレス者を研究テーマに選んだ経緯を聞きたい。
- A: 昔外国に住んでいて、ホームレス者がたくさんいた。日本に帰ってきても少なくはないがいて、気になっていた。今の日本を作ってきた土方なのになぜ大切にされないのか不思議だった。
- Q: 漫画では見た目よりも3要素が重要とのことだが、現実では見た目で判断される。そのかい離はなぜ起きているのか。
- A: 実際には外見的特徴が少ない。外見的特徴がないのをホームレス者と見せるために3要素が必要だった。
- Q: 外見的特徴での判断が間違っていて、漫画の3要素のほうが正しとすると、我々のステレオタイプが間違っていたのか。
- A: 間違いではないが描かれ方が変わってきている。
- Q: なぜプラスアルファとして外見的特徴を入れていないのか。3要素に加えて外見的特徴も入れればより伝わりやすいはずだ。漫画がステレオタイプを形成したのではないとしたら、漫画によって新しいステレオタイプが作られていくのか。
- A: 漫画家が昔の描き方にとらわれないようにしており、それはいい傾向であり、尚且つ実態に近い。
3要素がそろっていることよりもステレオタイプ的な描かれ方のほうがホームレス者のように感じられると思うのだが実際の描かれ方はそうではなかったのは意外である。漫画でステレオタイプにあるような外見的特徴が描かれることが少ないのは、出版における表現規制がかかっている可能性はどうだろうか。
例年にまして発表時間がオーバーしている。リハーサルをすれば解決するはずだ。来年は22人もいるので時間遵守がより必要になる。観客とのコミュニケーションがとれていれば時間を伸ばしてもよい場合あるが、今回のように一方的にしゃべる場合ではだめだ。
サブカルチャーや大衆文化は世の中では割とどうでもよいことではあるが、掘り下げていくと世界につながっていく道が見えてくる。自分で問いを立てて結論にたどり着くということはいい経験になる。また卒論発表で外部の人を招くことで、普段の発表とは異なりなあなあでは通じないように言葉を選ぶ必要があって勉強になっただろう。